西洋医学的な観点から

ぎっくり腰は急性腰痛症(きゅうせいようつうしょう)と云われ突然腰部に疼痛が走る疾患で関節の捻挫、筋肉の損傷、筋膜性炎症などと位置づけます
主にぎっくり腰と呼ばれていますが、ぎっくり腰は医学用語としてはあまり使われません
特に急性で起こったことによる腰痛、そしてレントゲンやMRIなどに異常が見られない場合は『急性腰痛発作』と呼ばれます
ここで先生にレントゲンやMRIなどで異常が無く
『急性腰痛発作』です!
と認定された方、痛みの原因はそのほとんどが腰椎の椎間関節の『亜脱臼』です
亜脱臼とは、云うなれば捻挫みたいなもので関節が半ば外れかかった状態を云います
また、椎間関節内へ滑膜が挟まった場合も考えられます
つまり、ぎっくり腰のほとんどは腰骨の関節を捻挫した状態なのです

※ぎっくり腰は急性な腰痛の総称で全部で4種類に分けられます

『急性筋膜性腰痛』
(きゅうせいきんまくせい
ようつう)
疲労の溜まった筋肉は硬くその状態で筋肉を使ったため筋肉が断裂してしまった『急性筋膜性腰痛』(きゅうせいきんまくせいようつう)
『椎間関節捻挫』
(ついかんかんせつねんざ)
『仙腸関節捻挫』(せんちょうかんせつねんざ)
急激な捻り動作や勢いよく物を持ち上げた時に、背骨と背骨の関節がズレないように補強している靭帯(じんたい)が伸びてしまったり部分的に断裂してしまったりする
『椎間関節性腰痛』
(ついかんかんせつ
せいようつう)
背骨と背骨の関節を包んでいる関節包(かんせつほう)が、関節の中にはさまってしまい激痛を起こす
『急性椎間板ヘルニア』
(きゅうせいついかんばん
へるにあ)
背骨と背骨の間に挟まっている軟骨(椎間板・ついかんばん)が、腰を酷使することにより、外へ飛び出して神経を圧迫し痛みを起こす

しかし、注意しなければならないのは他の病気が原因の場合も考えられます
急に痛くなる腰痛は大概、このぎっくり腰なのですが慢性的な腰痛や痺れは他の疾患を腎臓、肝臓、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱間狭窄症、はたまた癌や血管閉塞など引き起こしている可能性があります
幾度も幾度もぎっくり腰を繰り返す人や、ぎっくり腰が長引いているときは放っておかず痛みの原因をハッキリさせるため一度MRIなど撮られる事を強くお勧めします

●動けないようならば無理はなさらないで下さい、往診もいたします

ぎっくり腰になってしまったら

まず落ち着きましょう

突然ガツンと来てしまったら、まず可能ならば横になり膝を曲げて海老のようにカギ型になりましょう(カギ型=カギカッコを思い出して下さい)
ご自分が楽だと思う状態で、呼吸を整えどこが痛いか確認してみましょう
慌てて動いたり、マッサージやストレッチとかしてはいけません
外出先や仕事の場合
仕事場や外出先で起こってしまった場合、壁や柱などにもたれて呼吸を整えます
もちろん慌てて動いたりしないようにしばらくはジッとして、歩けるようならばゆっくりと歩幅を縮め歩き、腰が落ち着ける場所を探しましょう
座る場所はクッション性の物でなく硬いベンチのような物が楽です

温めない!冷やす、されどずっと冷やすのはNG
ぎっくり腰は炎症です
痛めた直後は冷やすのが効果的ではあります(冷湿布等)
脳に伝わる神経の冷たさの刺激が加わることで、痛みの刺激をブロックする作用が働くので、痛みが和らぐようです
ただし、ずっと冷やすのは筋肉が固まり血行不良の元です

お気持ちが落ち着いたら治療を早めに
正直、ぎっくり腰ならば基本ほっといても自然治癒します
しかし早め早めの手を施せば当然ながら回復は早くなるのです

ロキソニンについて

そもそも、ロキソニンは痛み止めではなく痛みの元となる炎症を緩和させると
して服用する薬で、効果も個人差があり服用したからと必ずしも痛みが緩和
される効果がある訳ではありません
所詮は気休めと考えるべきでしょう
痛みの元は炎症なので炎症を起こさせない、そうして居るうちに痛みの元は自然に修復をして行くと云う考え方です
しかし、どうしても痛くて苦痛で耐えられない時には心強い味方でもあります
さて服用したら治った様な気がします、が、残念ながら気がしただけです
ロキソニンはぎっくり腰が治った訳ではなく、単なる痛み止めだということを認識しておきましょう
そこで安静にしないと症状が悪化して再発や痛みが長引いてしまうのです
女性の場合は『生理痛』などの時によく飲む薬として有名ですね
そんなロキソニンは腰痛の時にも効果を発揮してくれます
飲むロキソニンは、痛くてたまらない時に飲むとぎっくり腰の痛みを和らげることが出来るのです



さらにロキソニン、あまり頻繁に使うと身体に抗体が出来て効きにくくなります
そして強い薬なので胃荒れにも気をつけないといけないのです
最低6時間は時間を空けて、動けないほど痛い時だけに服用するのがベストです
そして、強い薬なので長期の服用は腎(じん)や肝(かん)に確実に影響を与えてしまいます

貼るタイプのロキソニンもあります
シップみたいな病院でもらえる肌色のテープ状のものです
このロキソニンテープ(肌色のシップ)は、皮膚から鎮痛剤を痛いところに浸透させる効果があります
この張るロキソニンテープは、痛い所に張るのが一番効果的です
おおよそ4時間ほどで効果がなくなるので更に痛い場合は貼り替えるのが効果的でありますが、あんまり長い時間貼っているともれなく真っ赤になり荒れます
貼りっぱなしは表皮がグズグズになってしまいますので要注意です
更にこのロキソニンテープも痛み止め、何回も何回も痛い所に張っていると皮膚の感覚が鈍くなります
そんな時は使用を控えて、しばらく何も貼らないでおきましょう

 

東洋医学的な観点

痛みの原因を東洋医学的には
『経絡を流れる気血(きけつ)の滞り、もしくは気血(きけつ)の不足』と位置づけられます
気や血(けつ)の流れが滞って、腰に負担がかかってしまった為に起こると考えられてます
東洋医学では気とは、目に見えない不可視的なものと定義づいてます
この不可視的エネルギーは人が生きて行く上でこの目に見えないエネルギーは大変重要視されています
誰もが持っているこの不可視的エネルギーである『気』は、絶えず一定のペースで身体中を巡り、血液やリンパ液をスムーズに流し、内臓や筋肉に正常な活動を維持させていると考えられてます

『精気』とは
東洋医学では『精気』は『生き生きとした気』と云う解釈のなのです
前記でも記した、目に見えないものですが既に世間で認知されている『気』、不可視エネルギーの事ですね
腎(じん)には生まれつき両親から受け継いだ『先天の精』がしまわれて、脾胃(ひい)で飲食から作られた『後天の精』が補充されます
たとえ親から貰った『先天の精』が少なかったとしても『後天の精』が補充されるので大丈夫と云う事です

『先天の精』は西洋医学的には『遺伝』と云う言葉が一番合うかと思います
目に観えない不可視エネルギーを両親から受け継ぐと云う理論はまさに東洋医学的な香りがしますが……
腎中の精気(せいき)は成長、発育、生殖に深く関わり腎(じん)に問題が有ると異常が出ます
東洋医学で云う腎(じん)はそれだけにとどまらず、生命力の源、五臓六府の根本、生命体の根っこともいえる大変広い概念があるのです

西洋医学的には視床下部、脳下垂体、副腎等の内分泌系、泌尿・生殖器系とされる箇所も全て含んでいます
更に腎(じん)の津液(しんえき)、水は『精気』が無いと動かない考えられているのです
気が流れの悪くなる事を東洋医学では気滞(きたい)と称してます
血(けつ)は気の流れと共鳴するように流れています
気の流れが悪いと血(けつ)も流れが悪くなり流れが悪く滞りがちな血を東洋医学的には瘀血(おけつ)呼んでいます
瘀(お)とは停滞という意味で、文字通り血(けつ)が滞ったり、血(けつ)の流れが悪くて澱んだ状態を指すします
瘀血(おけつ)になった血液は正常な状態に比べて粘度が強くなっていて、流れが悪くなっていまず
腰痛全般に局所的にみればその部分を流れている経絡が、寒(かん)または熱の影響を受ける或いは瘀血により気血の循環が悪化によって起こります東洋医学では全ての疾患を『病変』と表現し大概、臓腑や経絡にて結びつけて考られてます
腰痛も同様なのです
気血(きけつ)の滞りや不足の根底には肝虚(かんきょ)や腎虚(じんきょ)による気血循環の悪化から起こった『病変』と位置づけます
一般的には朝や、寒い冬など気血循環が充分でない場合ぎっくり腰になりやすいとされてます
更に梅雨時期の様な湿気の多い季節も要注意なのです
これは、東洋医学的には湿邪(しつじゃ)、もしくは寒邪(かんじゃ)に要因が有ると考えます

湿邪(しつじゃ)とは
湿邪(しつじゃ)は陽気を傷つけ、気の流れを阻害し気滞(きたい)を起こすとされてます

湿邪は湿度の高い場所に長時間滞在していたり、長時間全身雨に濡れた状態にかかりやすくなります
もちろん梅雨時期の様な長期間、湿気に身体がさらされている時も同様です
スポンジが水分を吸収するように、湿気が多いと汗腺が覆われ汗が出にくく、身体に水分が溜まっていきます要は、水が水で蓋をしている状態ですまた、湿気が多いと自然界ではカビが繁殖しますそれになぞり東洋医学では同じように、舌が白い苔でべったり厚ぼたっい人は湿邪(しつじゃ)に犯されている可能性が高いと位置づけます
東洋医学は科学的根拠の無い時代から自然の力や摂理や表情を人間の身体に当てはめて位置づけをしているのです

そもそも西洋医学では病気の因子としてウイルスがありますが、東洋医学ではウイルスと云う概念は存在しません
湿邪(しつじゃ)のように病因になるものを『邪』(じゃ)と位置づけています
東洋医学では人間が病気になる因子を三つの因子として『外因、内因、不内外因』と考えられてます
外因とは生体に病気をもたらす、外界の原因です
内因は、主に人の体の中にあって病気の原因になるもので精神的な状態といえばいいでしょうか
そして不内外因は、外因、内因どちらにも属さないもので、飲食物や疲労、遺伝などの要素を指します
湿邪(しつじゃ)はまさに外因に当たります
外因では、人間を取り巻く自然界の気候の状態を、六つの状態・概念に分けて、これを『六気』(ろっき)と呼んでいます
六気(ろっき)は 『風・寒・暑・湿・燥・火』 という、6つの状態に分類されています
六気(ろっき)とは自然界にあって万物を育む働きが有りそのままの状態では特に人体に害を及ぼす物ではないのです
六気が病気の原因になった場合、六つの外因が有る為六邪(ろくじゃ)と呼ばれています
風・火・暑・湿・燥・寒、 の状態が邪(じゃ)ということになり、これらは東洋医学らしく環境や時節に大きく関係しています
そしてそれぞれ 『風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪』 と名前にて病理の位置づけとされるのです

梅雨時期のぎっくり腰の症状に当たる湿邪(しつじゃ)の要因は元から湿(しつ)が身体に多く存在している、つまり身体の外側(肌肉の部)に水の多い人、すなわちむくんでいる人に多いのではないかと考えます
元から水の多い人や溜め込んでいる人は外界に湿気が増えると身体が共鳴してしまい、どんどん湿(しつ)を取り込んで身体の中の水を増やしてしまう
東洋医学では気(き)が血(けつ)と水(みず)とを循環させていると考えられています
水は気(き)が順調に流れていないと外に発散できないと考えられてます
取り込んだ湿(しつ)は関節に流れ込み、既に気(き)が虚しているので滞る状態に陥ります
すると関節に水が停滞、すなわち水が多い身体は水を発散できずに溜まってしまい関節に弊害を与えてしまうと結論に達します
これが梅雨時期に多いぎっくり腰の根幹ではないかと位置づけます
そう考えるとなかなか水が身体外に出ない理由はこの湿邪(しつじゃ)に病因があると考えます

さて、ならば水を身体外にどんどん出せば解決ではないか?

単純にそう思いますが、もう少し複雑な素因が絡んでます
東洋医学の五臓の脾(ひ)は特に、この湿邪(しつじゃ)を嫌うとされてます
湿(しつ)が過剰に入り込めば脾(ひ)が虚されます
脾(ひ)の精気が虚すると胃腸で生産される陽気(ようき)が不足します
脾(ひ)と胃は近縁性がとても高いのです
そして陽気が不足した状態なので表に陽気は発散出来なくなります
上記の通り、水は気(き)とともに身体外に発散すると考えられます
さて、発散出来ない溜め込んだ陽気は色々な場所に停滞してしまうのです
もし胃腸で停滞したならば胃腸の病症が現れ、肌肉(きにく)や関節に停滞してしまったならばそこに陽気とともに水が停滞し、痛みが出るのであります
そして、この元から痛んで弱くなった関節や肌肉(きにく)が、何かの拍子に筋膜痙攣を起こし炎症を伴う状態が東洋医学的な『ぎっくり腰』の病因のひとつなのです

脾虚(ひきょ)とは
正確には脾(ひ)の精気が虚することです



東洋医学的には陽気は胃で生成されると考えられています
脾(ひ)の精気が虚すると云う事は胃腸で生産される陽気が不足してしまいます
東洋医学でいう脾(ひ)とは、消化吸収の働き全般の事を現しています
気(き)と血(けつ)を生み出す源なのです
これは飲食物からエネルギーを作り出し運搬すること、いわゆる消化吸収活動に当たります
脾(ひ)は胃腸で消化された飲食物を、気(き)や、血に変えて心肺へ送りそこからから全身に運搬される一連の働きを司っています
これを脾(ひ)の運用作用と称し、取り込んだエネルギーを昇らせる働きを『昇精』(しょうせい)と云います
気(き)には固摂作用といって、血(けつ)を血管の外へ出ないようにする働きありますが、これに先ほどの脾(ひ)の特徴『昇清』が相まって『統血作用』と呼ばれます
そして脾(ひ)は身体内の水(津液)も運搬する働きも有るのです
上記で記したように津液(しんえき)、水は『精気』が無いと動かない考えられています
これが今回のポイントで、脾(ひ)は逆に過度の湿(しつ)に対してかなり脆弱なのです
よって、脾(ひ)は湿邪(しつじゃ)をものすごく嫌うのです
湿(しつ)が多くなると脾(ひ)から津液(しんえき)を受けて働いている胃に過剰な津液(しんえき)が入りすぎ、水浸しになります
当然ながら働きが鈍くなります
なお、湿(しつ)とは津液が病的な作用をする時の呼び名で、正常なときは津液(しんえき)と呼ばれます
西洋医学的に考えても胃の消化吸収が悪くなれば、臓器に栄養が行き届くなるということは同等に納得ですね

津液(しんえき)とは
身体全体を潤し、体内を循環して体温調節や関節の働きを滑らかにします
津(しん)液(えき)にはその性状、機能や分布部位の違いによって区別があります

『津』

性質が希薄で粘り気がなく、主に広範囲に分布し体表を(皮膚、筋肉など)潤します
『液』
性質が比較的濃厚で粘り気があり、骨、内臓、脳、髄などを潤し関節運動を円滑にします

津液(しんえき)は血管内では血液ですが、血管から出て細胞間に入るとリンパ液になり、細胞内に入ると細胞内液となります。
水の巡りが悪くなったり、体内の水を処理できなくなったりすると、細胞間や各組織に必要以上に水が滞り、むくみやめまいアレルギーなどさまざまな不調を引き起こします
津液(しんえき)は体外からの補給が可能です
要は、水を飲むなどの行為は津液(しんえき)を身体内に入れられると云う事です
また東洋医学的には津液は自ら流れる事が出来ないとされています
いわゆる気(き)のエネルギーを利用するので気に不調が有れば津液の流れは悪くなると考えます
また津液(しんえき)は血(けつ)と同じく自ら流れることができないため、気のエネルギーを利用するのですがこちらも気に不調があれば当然ながら津液(しんえき)の巡りも悪くなります

寒邪(かんじゃ)とは
さて、寒邪(かんじゃ)の要因によるぎっくり腰はずばり寒(かん)による冷えによるものです
すなわち寒(かん)とは気温が低いこと、寒さのことで本来ならば『冬季の気』とされています

しかし、昨今では冬の寒さもさることながら季節外れの寒さ、身体を冷やす、汗をかいて風に当たる、冷たい飲食物の摂り過ぎなども寒邪(かんじゃ)となるのです
寒邪(かんじゃ)は陰陽では陰の気が強いとされていますこのため寒邪(かんじゃ)が身体に入ると陰陽のバランスが崩れ、陽気を虚してしまいます
上記の通り陽気には身体を温める力があり、陰気には身体の余分な熱を除く力がありそして陽気(ようき)は身体の表面を流れ、陰気は身体の中を巡っているものとされています

この陰陽(いんよう)がバランス保つ事により、身体が正常な状態に有るのですただ寒邪(かんじゃ)が身体内に入ったら、冷えてぎっくり腰になった……とは単純な理説は成り立たないのです
まず、寒(かん)は寒い冬や冷房で冷えた環境で誰の身体にも当然の事ながら入り込むものなのです
その入り込んだ寒(かん)は個人個人の身体の現状況により左右されます
頭脳労働や精神労働、肉体労働そして産後や生理などで肝血(かんけつ)が不足状態に有る時、この寒(かん)が入り込み肝(かん)を冷やしてしまうと、肝(かん)の支配している筋肉や子宮(子宮は筋肉の固まりみたいなものなのです)などに『病変』が現れます
要は、血(けつ)の不足による冷えがここでは誘因となります
結論から云えば、血(けつ)が虚したために入り込んだ冷えが加速し、痛みが出る、陽気が虚して更に痛みが出る、そして冷えは深い所まで入り込むと云う負のループに陥るのです
これを東洋医学的には『肝虚陽虚証』(かんきょようきょしょう)と位置づけます
『肝虚陽虚証』(かんきょようきょしょう)として治療するのは血寒が原因なので、単純に熱する治療をするのが通常なのかもしれません
しかしこの案件は血(けつ)不足による冷えによるぎっくり腰なので、『炎症』が主な症状です
あくまでも症状は肝虚陽虚症(かんきょようきょしょう)は誘因のひとつと位置づけ、治療方法はまた考えなければいけないかと思います
なお、寒邪(かんじゃ)も湿邪(しつじゃ)同様に脾(ひ)を傷むるものとされます
上記の説明同様、脾(ひ)の精気が虚すると云う事は胃腸で生産される陽気(ようき)が単純に不足してしまうのです


肝(かん)とは

東洋医学では肝(かん)には魂が宿る、そして身体の中枢器官であると共に精神を主るとされています
そして西洋医学同様に血(けつ)をも主る臓でもあるのです


肝(かん)の主な働き

1.蔵血(ぞうけつ) 肝の第一機能は蔵血(ぞうけつ)です
これは血液を貯蔵してその量を調整して全身に送り出す作用です
2.疎泄(そせつ) 肝の第二の機能は琉泄(そせつ)です
これは気血がスムーズにコントロールする作用です

この二つは筋運動に大きな関わりを持ちます
蔵血(ぞうけつ)機能に狂いが生じれば筋肉に流入する血液の量が減少します
疎泄(そせつ)機能に狂いが生じれば各筋肉が必要とする量の血が流れてこない恐れがあります
ちなみに他にも
3.脾(ひ)や胃(消化器)の働きを助けます
4.胆のはたらきをコントロールする→胆汁の生成を促進します
5.筋肉を管理して関節運動が円滑に行えるようにします
6.目と関連して、視力を調節しています(目に開竅)
7.血の濡養作用の状況は爪の変化としてあらわれます(華は爪)
  貧血とか爪を観察すると分かるっていいますよね
8.涙は肝液です
と、ありますが
今回、ぎっくり腰に特化している内容は蔵血(ぞうけつ)と疎泄(そせつ)、そして脾(ひ)と胃が最も重要なのです

肝(かん)の特徴

 

肝虚陽虚証(かんきょようきょしょう)とは
肝(かん)は血(けつ)を蔵していて正常であります
この血(けつ)が不足したり、多すぎたり、冷えたり熱が加わったりと変動が生じた場合状態が『病変』と考えます
さて、今回の肝虚陽虚証(かんきょようきょしょう)は血(けつ)そのものの不足による冷えで、肝虚陽虚証(かんきょようきょしょう)になると全体に脈が弱くなり左の関山の脈は虚となるものです
東洋医学的には筋(きん)は肝(かん)に関係が深く、肝(かん)は筋を生ずとも考えられています
単に、筋(きん)ではなく筋膜と記されている事が多く筋肉そのものと健やその周辺も含まれるのではとも思うのですが……
そして、筋(きん)は肝(かん)に蔵している血(けつ)が送られてくるからこそ働くのです
血(けつ)が不足すれば当然の事ながら筋(きん)が引きつったり弛んだりするものです
そのようなことからぎっくり腰の誘因のひとつと位置づけても良いでしょう
陽虚(ようきょ)とは陽気が不足していて冷えていると云う意味でしたね、しかし単に陽経(ようけい)の虚ではないのです
経絡(けいらく)で云うと肝経(かんけい)胆経(たんけい)も虚しているので、したがって脈は『沈・細・渋・弱』になります
肝虚陽虚証(かんきょようきょしょう)の病症は不妊症や流産癖、月経過多、あるいは冷えなので月経痛の人が多いのです
(この案件は不妊症のページで)
もちろん冷え性で手足の末端が冷える、そして筋の凝りによる引きつりでぎっくり腰だけでなく肩こりもヒドい人が多いのです

肝経(かんけい)とは
12の経絡のひとつ、そして足の厥陰肝経(けついんかんけい)は経穴(つぼ)が14穴あります
身体内では肝(かん)の臓に属し、胆(たん)の腑に絡みます
身体表では足背内側、下肢内側の真ん中、腹部の側面を走り、肋骨弓のあたりに至るのです
胆経(たんけい)とは

12の経絡のひとつ、そして足少陽胆経(あししょうようたんけい)は経穴(つぼ)が44穴あります
身体内では胆(たん)の跗に属し肝の腑に絡みます
身体表では顔面、側頭部、体幹の側面、下肢外側後縁を走り、足の第4指外側に至るのです
足の少陽経は、古典では『半表半裏を主る』と云われ側頭部、体幹側部の症状によく用いられらます




治療法

痛みは、腰の左右どちらかに強く表れます
治療はぎっくり腰になってから出来るだけ早く、1〜2日が効果的ではないかと思われます
時間が経過しすぎるとどんな病症でも治療に時間を要するものです
激しい痛み、筋肉の引きつりで関係ない箇所にも力が入っているせいか筋肉痛も発生します
出来るだけ早い治療が得策かと思います
ヘルニアなどがないものでしたら、通常は1回の治療で治すことができます、が、こう記しますと全て治ると勘違いされてしまいそうです
しかし、痛みが取れるということは確かなのです
詳しく云うと、筋組織の損傷の回復には数日を要します
一度の鍼治療だけでも組織の悪い部分が治りますので、ヘルニアや坐骨神経痛を併発することを高い確率で予防出来ます
鍼施術における痛みへの最大の要旨は、大腰筋へのアプローチなのです
なお大腰筋は深層にあるため、マッサージすることが出来ません
要は、気血(きけつ)の滞りにて固まった筋肉を中心に鍼をします
そして痛みの強い方、左右どちらかを特定して強く表れた一方が発信源とし、そこを重点的な緩和に努めます
ぎっくり腰はこの発信源をしっかり特定しなければ、治癒の速度が違ってくるのです
ここで経穴(ツボ)の取り方を失敗すると根本的な痛みは取り除けないと考えます
そこで施術者の腕が試されるものです
痛みが緩和されなかったら、ハズレと云う事ですよね

お腹周辺や脚
さて、腰周辺の強張った筋肉を弛めるにはただ漠然と腰やその周辺に鍼をうつだけでは全く解決にはなりません
経絡(けいらく)の理論に基づいて経穴(つぼ)を狙っていきます
なので腰から離れた脚とかに鍼をうつのは不思議に感じる方も有るかもしれませんが、理にかなった有効的なアプローチなのをご理解ください
腰部からの神経反射のせいなのか腹部が痛くなる人が結構います
右の腰なら右の腹、左なら左の腹、が多いようです
その際は腹部にも鍼灸をうちます
ご安心下さい、反射の痛みなのですぐに痛みは止まるはずです

一般的なアプローチ
痛みの発信源はもちろん事、血(穴)陽気(ようき)の虚に対してのアプローチもします
まず鍼の場合、最初から深い刺鍼はしません、接触鍼を中心に進めます
大概、L2〜L4あたり発信源となり痛くなる人が多いのです
そうなると『腎兪』(じんゆ)『大腸兪』(だいちょうゆ)に打ちます


1.腎兪(じんゆ)
第2、第3腰椎棘突起間の外1寸5分に取ります
腰膝軟弱、腰痛、泌尿器系疾患、生殖器系疾患、慢性下痢、冷え性、婦人病に使います
『兪』は輸(運ぶ)の意味があります
腎の気が巡り、体表に注ぐ所であることに由来します
2.大腸兪(だいちょうゆ)
第5腰椎棘突起下縁の外1寸5分に取ります
腰痛、坐骨神経痛、腹脹、腸鳴、下痢、便秘に使います
『兪』は輸(運ぶ)の意味があります
関元が腹部にあるのに対し、背部にあるため関元兪とも呼ばれます
『関』は連絡するの意で身体の陽気を連絡、通行させる所という意味がある
3.肝兪(かんゆ)
第9、第10胸椎棘突起間の外1寸5分に取ります
主に背筋痛、目疾患、肝疾患、婦人病、神経衰弱に使います
『兪』は輸(運ぶ)の意味があります
肝(かん)に近く、肝経の気が巡る所でもあり、肝疾患を治すことからもこの名前が名づけられました
4.飛陽(ひよう)
承山の外側1寸、崑崙の直上7寸に取ります
腓復筋の知覚・運動障害、後頭痛、めまいなどに使います
絡穴で膀胱経はここで絡脈が分かれ、腎経に飛んでいくという意味です

寒邪による『肝虚陽虚証』(かんきょようきょしょう)のアプローチ
陽虚(ようきょ)とは陽気が不足していて冷えていると云う意味でしたね、しかし単に陽経(ようけい)の虚ではないのです
経絡(けいらく)で云うと肝経(かんけい)胆経(たんけい)も虚しているので、したがって脈は『沈・細・渋・弱』になります
一般的経穴(つぼ)にプラスして肝経、胆経の経穴(つぼ)も狙います


肝経を狙う
1.中封(ちゅうほう)
内果前1寸、前脛骨筋腱の内側下際の陥凹部に取ります
内果腫痛、足関節障害、泌尿・生殖器系の障害、婦人病、神経衰弱、腹痛に使います
『中』は中心、真中、『封』は封鎖される、閉じ込められるなどを意味します
この経穴(つぼ)は長母指伸筋と前脛骨筋とに挟まれた陥凹の真中にあるので、中封と名づけられたのです
2.大衝(たいしょう)
足背の第1、第2中足骨底間の前の陥凹部に取ります
一般的な効用は頭痛、のぼせ、めまい、不眠症、胸脇苦満、生理不順、生理痛、足背痛と云った所です
古代、足背動脈を太衝動脈と云われます
気血が盛んで『太く衝動する』ことを示しています
胆経を狙う
1.丘墟(きゅうきょ)
外果の前下方の陥凹部に取ります
頚項痛、下腿の軟弱無力、外果腫脹・疼痛を抑えます
大きな丘を『墟』と云い外果(がいか)をそれに例え名づけたのです
ちなみに外果とは『そとくるぶし』にあたります
2.陽陵泉(ようりょうせん
腓骨頭の前下際の陥凹部に取ります
片麻痺、膝関節障害、下肢の知覚・運動障害に使います
『陽』は外側で『陵』は腓骨頭を示唆し、その前下方の陥凹部を『泉』に例えたものです
3.風市(ふうし)
大腿外側の中線上、膝窩横紋の上7寸に取ります
片麻痺、下肢の知覚・運動障害に使います
『市』とは集合する、集結するなどを意味です
本穴は、風の気が集まる所を示し袪風の要穴であることに由来します
袪風(きょふう)とは、風邪(ふうじゃ)を追い出し、経絡を通じさせる働きです。風邪を予防し、陽気を全身に通じさせて気血の流れをよくする働きがあるとされている。)

湿邪による『脾虚』(ひきょ)のアプローチ
脾の精気が墟すると胃腸で生産される陽気が不足してしまいます
この場合のぎっくり腰は、肌肉(きにく)や関節に停滞してしまったならばそこに陽気とともに水が停滞し、痛みが出る、そしてこれが元から痛んで弱くなった関節や肌肉(きにく)が、何かの拍子に筋膜痙攣を起こし炎症を伴う状態です
根本的な原因は陽気不足により肌肉(きにく)や関節から水が抜けない状態抜けないと云う事なのです
肌肉(きにく)や関節に停滞してしまうと陽気とともに灸で水を発散させます
ただし、発信源である患部は炎症を起こしてます
患部に灸熱による治療は禁忌と考えます
熱が有る患部に不用意に灸を打つと更に熱が多くなり痛みが倍増するでしょう
灸で熱を加える事により血が熱を流れが悪くなり、更に血流悪化が悪化すると水が取れなくなります
ただし直接の患部ではなく経穴に知熱灸を使い湿(しつ)と陽気を発散させるのは良しと考えます
非常にデリケートな内容なので施術者の善し悪しが問われます

胃経と膀胱経、小腸経を狙う
今回の場合は湿(しつ)による脾虚(ひきょ)の治療をします
まず水と陽気を発散させ、気滞(きたい)を解消を狙う必要があります
もちろん一般的なアプローチも同時に行い患部である『腎兪』(じんゆ)『大腸兪』(だいちょうゆ)も場合で狙います
そして胃が虚されてるため胃経はもちろんの事、膀胱経、小腸経を狙います
(しかし結局は胃が虚されている訳なので全部と云えば全部なのですが……)
難しい所も有るのですが、まずは表皮の水の溜まり具合とその患者の体系にも左右されるでしょう
まずは、脾(ひ)と胃の親和性を念頭に治療することです
湿(しつ)と陽気の発散を促す為に表皮にローラー灸を使うのも良いかと考えます

1. 三陰交(さんいんこう)
内果の上3寸、脛骨内側縁の骨際に取ります
婦人科の諸症状、生殖器系の障害、慢性出血症状、消化吸収不良の障害、神経衰弱に使います
足の三陰経がここで合流するので、こう名づけられました
2. 委中 (いちゅう)
膝窩横紋の中央に取ります
腰痛、下腿の知覚・運動障害、片麻痺、腹痛に使います
四総穴の中で、委中は脊柱・腰の疾患を治療する要穴であることを強調しているのです
3. 崑崙 (こんろん)
外果頂点とアキレス腱との間の陥凹部に取ります
後頭痛、アキレス腱障害、踵痛に使います
中国で『崑崙山』という山があり、外果隆起とアキレス腱をそれにたとえ、運動にかかわる重要性を示している
4. 承山 (しょうざん)
腓復筋下縁の中央、委中のした8寸に取ります(下腿後面の中央、足を底屈し、腓復筋下縁に見られる『人』という形の筋溝に取る)
腓復筋の知覚・運動障害、坐骨神経痛に使います
『承』は受けるの意で、承筋と同様に支えるという意がります
下腿の腓腹筋の大きな内外筋腹の分かれる所にあり、その突起が山のようであることからきています


腰椎ベルト・コルセットについて

発症直後は効果的
腰痛ベルトやコルセットをすると生活が楽です
お腹にある程度の圧迫力を与える事で腹腔圧が上がり、身体の中から身体を支え腰椎にかかる負担を軽くなります
骨盤にも圧力がかかりますので、仙腸関節を引き締めて仙骨が左右前後の動きを抑制してくれます

悪い点
要は腰を支える筋肉の代わりなのです
楽だからと云ってずっとしている事は、ご自分の腹筋の低下に繋がります
腰回りや腹筋の筋力が低下するという事は、またぎっくり腰の再発にも繋がりますので腰の具合が良い感じに治り、安定したらぜひ外して下さい
筋力低下はまた腰を痛める原因になります

良い点
そして長時間座らなければイケナイ場合や、今日は少し腰がおかしい?とか云う時に予防でサッと素早く巻けるといいですね
保温性も保てるので冷える場所とかに長時間居なければ行けない場合(冬のお座敷宴会や花見とか……)にも効果的です